津軽三味線の演奏で、いままで、
1つ気になっていた事があるんです。
それは・・・
「弦高」の違い。
「ハの調整とカンベリ直し」でキチンと棹を整えても
弦高が低く感じるのと逆に弦高が高く感じる個体があるんです。
因みに今回は、経年劣化でなく「カンベリ直し」と
「ハ調整」など専門家がメンテした後の話です。
例えば、弦高が高いメリットは「大きな音」。
(天神側へ行くほど棹と糸の隙間がある)
(これは正常。胴側へ行くほど、糸が棹とくっつく。
ハが狂っていると駒を外している時、糸と棹には隙間が出来る)
棹と糸の高さがある分、しっかり叩けないと弾かれたり、
「速弾き」が好きな人にはタイムラグが気になるかもしれません。
弦高が低ければ、指でツボを押さえる距離も短いので
「速弾き」しやすいけど音量は若干小さくなります。
(駒の置く位置が同じ場合)
自分は、ヘタレなので、弦高が高いとバチが糸に
引っ掛かったり、指でツボを押さえる時の
運動量も多く弾きにくく感じるので、
弦高は比較的、低いのが好みなんです。
で・・・
自分用に今、残っているお気に入りの
三味線は普通のトチ入り紅木と紫檀の2本。
この2本、弾きやすさが、一長一短あって、
同じ『2分6厘』の高さの「駒」で同じ位置なのに
それぞれ弦高にクセがあるんです・・・。
持ち替えた時に、それはそれで新鮮なんですが、
ヘタレな自分は弦高に慣れるまで、
ウォーミングアップが必要で、
大事な時に全く調子が出ずに終わることも・・。
そこで、今回、東京の銀座京橋「エドグラン」で
ブース出店していた三味線の職人さんに聞いたところ、
色々、面白いハナシが聞けたんです。
細かいところまでは書けませんが棹の「ハ」の出し方には、
地域や流派などの志向に合った独自の調整も
少なからずあったりするらい。
一般的にはレアケースですが、もし、そんな
中古三味線に出会っていたとしたら・・・。
今回の自分のようなケースになるかもしれません。
なるほど・・では、どうすればイイのか?
その場合「そもそも論」なので考えた挙句、
身体で慣れるのもアリですが、視点を変え、
物理的に「駒」で調整することにしました。
現状・・・
・弦高も高く、駒を前よりで使っている紅木三味線
→コマを2分6厘から2分5厘へ変更。
・弦高が理想的で駒は通常の位置の紫檀三味線
→2分6厘で現状維持
(紫檀棹は駒の位置を基本的なポジションで使用中)
(問題の個体は音量重視なので位置を前よりに。
弦高が更に高くなるのでその分、駒を低い物へ交換して同じ高さに調整)
結果
2本とも、音色の違いはそのまま、
同じような弦高になって俄然、弾きやすくなりました!
何が言いたいかというと、リサーチしていると、
周りから聞こえてくるのは、
「綾杉胴のイイ三味線だから、イイ音も出るでしょ」とか、
『使っている素材』を重要視する風潮がある印象だけど、
使うパーツとその位置関係、素材、サイズ、定期的な
調整のハナシは余り聞きません。(プロなら違うと思いますが)
そのうえで基本、
三味線は自然界由来の為、一期一会。
普通の一般車が、スポーツカーをぶっちぎる位、
速くなるのと同じ様に、普通の並紅木の三味線が、
金細クラスに負けない、もしかしたら、それ以上の
音量と音色が出せる可能性もあります。
ただ問題は、ドライバーがポンコツだと、
ハナシも変わってくるけど・・。
いずれにしても、もう一度、三味線の小さいパーツのサイズや
コンディション、位置関係を見直しつつ劣化具合を
点検してみてはどうでしょう?意外な発見と変化が訪れるかもしれません。
カテゴリ:津軽三味線(仕事率50%)