2020年パンデミック直前、仕事の流れで
あれよあれよ、とハマってしまった津軽三味線。
約3年間、お金と労力と時間を工面して、
体験した情報をかなり端折ってご紹介!
津軽三味線に興味あるけど、
「道具の購入は実際どうなん?・・・」
そんな人へ、ちょっとだけ公開します!
あとは、実践あるのみ!
遂に最終回!
最終回(これまでのまとめ)
これまで全て「中古品の話」ですが体験上、
分かったのは、三味線が紅木であれ、紫檀であれ、
金ホゾであれ、基本的に市販品は、
サイズ、重量やサイズ規格がほぼ統一されている
印象で初心者にとって違いはほぼ判りません。
使用された木材の部位や個体差もあって、
正直、実際に弾いてみないと分かりません。
(元も子もないけどw)
ある人にはアタリでも、
ある人にはイマイチな印象・・だったり。
「良い楽器の条件」は「良い楽器」ではなく、
アタリの確率を高める為の基準でしかありません。
アタリかどうか最終的には本人の気持ちの問題です。
ただ、天神のサイズ感や形状、棹の付け根の
形状、ホゾの仕上げなどに微妙な違いがあって、
三味線の製造地域が大まかに予想ができたり、
自分なりに素材の選択基準は見えてきました。
自分の中で楽器選びの選択基準が有るか無いかは
大きな違いだと思います。
今までの経験から、
個人的に確信が持てたのは例えばですが・・・
原木からフルオーダーで作った物は除いて、
金ほぞ仕様でも、普通仕様でも、
紅木三味線は総じて総重量「2.8~3キロ前後」。
花梨は紅木と比べて見た目も重さも違いがすぐ分かりますが、
紫檀は重さも見た目も紅木と近く画像判別は難しいです。
漆など塗られていると画像ではほぼわかりません。
(厳密には木目や色味など違いはあります)
また棹が重めだと同じ五分大でも
シェイプが微妙に違ったり、
軽めの棹は上下の面幅が太めだったり、
重い棹はややシャープな造りになっていたり・・・。
裏どりはしていないので真意はわかりませんが、
今まで所有した三味線を色んな角度から
見比べてきた感じでは数値をほぼ、
統一している気がしています。
実際、オークションでも通販でも、
太棹に関して説明文に記載しているサイズは皆、
同じだと感じていませんか?
(細棹や中棹でも太棹と記載する輩もいますが)
手造りとはいえ、飾りではなく、楽器としての
大量生産品なので作業効率も含め、ある程度の
規格基準は必要ということなのでしょうか。多分。
ただ、製造元や年代の違い、
経年劣化による修復歴次第で若干サイズが
変わってしまったというのはあるかもしれません。
なので初めての一梃を買う時は、予算と見た目、
仕様などの必要最低条件だけ自分なりに決めておけば
価格と木の個体差はあるものの、
市販品の太棹のサイズに関してはほぼ同じ。
「あれはどうだ?」「これは?」と
選り好みしているとどんどん迷宮入りし
悩んでいるうちに手にするチャンスを逃します。
ただし、オークションは判別しにくい、
中棹 (棹幅3センチ以下)をベースにした、
『津軽仕様』なる魔改造品?もあるので注意です。
(手の小さい女性、子供向けに改造した物で粗悪品ではない)
なのであとは『出逢い』。
ご縁です・・。(結局ソレ??)
きちんと整備して糸や駒などの小物の種類で
チューニングすれば、たとえ通常の丸打ち胴でも、
金ホゾと同等か場合によっては、それ以上の
音色や音量へ近づける事は出来ると思っています。
よっぽど、重箱の隅を突く様に耳を澄ませるとか、
機械を使って音響測定をするとかしない限り、
丸打ちと金ホゾの音の違いは分からないし、
胴の皮の張り具合でも変わってしまいます。
(アタリ個体を探すよりウデを上げた方が早い)
とはいえ、モチベーション的にも良い三味線が
欲しいと思いますが中古の三味線は特に、
「標準値へ戻すこと」が結構重要だと思っています。
中古で購入したら、とりあえず、
三味線屋さんへ持っていって「カンベリ直し」
「ハの調整」など一通り点検してもらうのがお勧めです。
まずその三味線の「標準値」が分からないと
良い三味線のか、ハズレ三味線なのか、
または自分の演奏方法に問題があるのかが判断が出来ず、
自分も三味線も演奏を改善しようがありません。
また、
購入した三味線の履歴を知ることもできます。
例えば、ある1挺はホゾの中(棹の中)に
小さな釘?の様な物が使われていたお陰で
期間も修理料金も増えてしまいました。
過去に行った修復の跡なのか、はたまた
造った職人さん独自の技術だったのか、
結局、真相は分かりませんが・・・。
修理を依頼したら木材から
過去の遺物を発見!
↓
また他の個体は、見た目はなんともないんだけど、
演奏時に「原因不明の違和感」を感じ、
三味線屋さんで相談した所、
棹が微妙に波打っているということが判明。
カンベリも酷くはなかったのですが、
棹面を整えて、ハの調整後、1厘低めの駒へ変えて
「三味線に合わせたセッティング」をして解決しました。
コレ、結構ポイントだと思っていて、
「自分に合わせた三味線が欲しい」のか、
「ある程度、三味線に合わせられる」のか、
これも選択基準の1つだと思います。
前者のタイプの人は、フルオーダーか新品を
検討した方がモヤモヤは少ないかもしれません。
話を戻すと・・・「棹面のうねり」とか、
職人さんから教えてもらわなければ、
カンベリも無いので全く気がつかず、
駒のサイズも変える事もせず、
違和感を抱えたまま使うか、もしくは
直ぐに手放していたかもしれません。
逆の視点から言えば、このような個体が
中古オークションでは流通しているということになります。
また、大会にチャレンジしている人にとっては、
何故か「勝てない」という原因かもしれません。
中古購入品のメンテナンスに出すというのは、
そういった過去の履歴を発見できます。
また、皮と木材に関して近年、
動物愛護の観点と、伝統的な観点から賛否両論あります。
三味線の皮の為に動物を殺処分している訳ではなく、
廃棄される予定の皮を使わせて頂いているわけで、
毛皮コートやクロコダイルのバッグなどの、
ファッションアイテムとは考え方や経緯が違い、
否定から入るのはどうかなとも思いますが、
そのうえで昔の時代背景で天然皮しか選択肢がなく、
今へ至る訳ですが、近年は合皮も研究開発が進み、
選択肢は昔より増えています。
伝統を守る為に、新しい伝統として、
現代のモノを上書きする部分は
あるのではないかと思います。
さて、全6回に渡って、
『津軽三味線購入実践記』として
お伝えしてきましたが奥が深く伝えきれていません。
和楽器初心者ですが、仕事柄、商品知識と
市場傾向はある程度、把握しておく必要もあり、
今回、アレコレと購入したり試したり、と
自分も「オタクレベル」になったと感じます。
ここまで、気になるトータルの費用に関して、
細かい数字は省かせて頂きますが、
想定外の修理や消耗品交換の出費もある為、
若干の持ち出しはあるものの、
幸いトントン位で収まりました。
(出来ることなら全て保管しておきたかった)
パンデミックから約3年?、
なるべく損失を出さない様に
三味線の勉強とパソコンと睨めっこしながら、
中古相場や商品、業界のリサーチなど、また
オークションは(初参入だから尚更)
手放すべきタイミングの見極めと購入者探しへ注ぐ
労力と時間は正直、シンドかったです。
しかも、それで三味線が上達するワケでもなく
途中、なんだか不毛な感覚さえ覚えました。
(その労力と時間は稽古に使った方が・・・)
とはいえ、花梨〜紫檀〜トチ紅木〜金ホゾ、
犬皮の厚皮〜カンバリ〜各社の合皮の
三味線を、消耗品も含め一通り、
伝統的なカタチの状態で
色々と試すことができたのでそれはそれで、
ちょっとしたビジネス研修だと思えば、
出費を含め良い体験だったかもしれません。
数十年後には、全く違った素材になっていたり、
欲しくても手に入らなくなっている可能性もありますから。
それが「道具探求をするなら今だ!」と
今回、思い立った理由の1つでもあります。
購入に関して言えばもし不安なら、
中古でも三味線屋さんから聞いて購入するか、
現役の先輩奏者から勉強するのがお勧めです。
正直、ネットオークションは、
転売屋が適当な説明で売っていたり、
少々、ギャンブル要素があり、トラブルも含めて
納得の上でチャレンジする必要があります。
また、経験が少ない初心者にとっては
ネットは情報過多になりがちで何が良いのか、
悪いのか、安いのか、高いのか、
探しているうちに頭も混乱するかもしれません。
また、奏者や販売者、職人では、
視点も違うということもわかりました。例えば・・・
・演奏は上手いけど三味線の知識が乏しい人もいる。
・自己流で何十年も弾いてきてそれが基準の人もいる。
・三味線は弾かないけど販売だけしている人もいる。
・普段気にしない部分まで見てくれる人もいる。
同じ太棹でもそれぞれ、個人の見解が違いますので、
上記の事を知らずにやみくもに初心者がネットで
情報収集すると相手が見えないだけに混乱します。
(そもそも業界基準も曖昧だし)
だったら、最初の購入は高いかもしれませんが、
勉強代だと思って、お店で話を聞きながら、
決めた方が余計な手間や曖昧な情報もカットできます。
(中古にありがちな闇の勉強代より健全かとw)
そんなことも、今回は見えてきました。
以上、全6回の簡単な記事でしたが、
全て実体験、経験上のリアルな感想です。
これから、津軽三味線を始めたいと
思っている人、またはハマり始めた人へ
少しでも参考になれば幸いです。
P.S.
足るを知る・・・
その後、これらの紹介した物品は、
金ホゾ1挺と自宅用のサイレント三味線、
必要な備品を残し手元にありません。
元々、ゴチャゴチャと沢山のモノに
囲まれるのが苦手なのもありますが、
和楽器は手作りで工芸品的な要素もあるので、
ずっと手元におきたいモノや、今後の予備として
控えておきたいモノも多かったです。が、
保管場所の確保、維持管理の手間や
作業に要する時間、また移動時に荷物が増えたり、
遠征の時、持ち物に悩んだりする要因にもなり、
結構、時間とお金、労力もバカになりません。
また発表会や遠征では、楽屋が狭い事も多く
結局、現場で使えない物(使わない)も多いです。
緊急の時は大抵、会場のブースでも買えますし。
(お店にも貢献できますw)
三味線の数だけ修理や消耗品は増えるし、
更に犬皮は使わないと破けやすくなります。
実際に一時期、数挺のストックがあった時は
地味にとっかえひっかえメンテが大変でした。
もし自分がプロの奏者なら、まだ割り切れますが、
仕事や家庭の事情以外に諸々と意識をしなきゃ
いけないのも何気にストレスだったりしますよね。
それで三味線の稽古時間が無くなったり、
三味線が億劫になっては本末転倒です。
足るを知る。
本当は、結構シンプルで良いと思うんです。
昔は、今よりモノが無かったはずですし、
そもそも民謡は元々、身軽なはずです。
ということで、自分も身軽になるべく、
『津軽三味線』のカテゴリー記事はこれにて、
一旦、終了とさせて頂きます。ありがとうございました。
いつかイベント会場などリアルの場で
お会い出来ることを楽しみにしています!
それでは、良い和楽器ライフを・・・。
・津軽三味線購入の研究材料として次へ繋げる為であり、
転売を推奨する記事ではありません。
・これらの見解には諸説あり感じ方に個人差もございます。
・今後の経験値により見解が変わる場合があります。
・記事を参考にされて損害が生じても一切、責任は負いません。
ご自身のライフスタイルはご自身の責任によって得られるものです。
・画像その他、無断転載、使用を固く禁じます。
カテゴリ:津軽三味線(仕事率50%)