乾燥の季節到来ですね…クリーナーと椿油で
年内最後の全バラメンテ中。
そのうえで・・・・
三味線には、紅木、紫檀、花梨、という順に
素材のランクが一般的に拡がっているんだけど、
ワシントン条約の関係で、紅木が輸入できない状態に
なっているそうなんですね・・。
なので、昭和時代のバブル全盛の頃に
お金に糸目をつけないで制作された(?)かはわからないけど、
その頃の三味線が現在、国内在庫にある紅木よりも
良質だということで中古市場では高騰しているんです。
ただね、パッと見では解らない不調が多いのも三味線。
いくら良質な素材でも、高温多湿な場所で長期保管されてれば、
気温や湿度で反ったり、捻れたり、乾燥で割れたりするし、
楽器の演奏が好きな人って、意外と演奏はバッチリだけど、
道具のメンテや知識まではサッパリ・・って人も多い。
車も同じだよね。
運転は出来ても機械の部分はサッパリっていう・・。
だから、いくら昭和期の三味線が良いと言っても、
30年以上の月日が経っているわけで、
車で言えばヴィンテージカーと一緒・・・。
熟成された昭和期からの紫檀の原木
ヘタしたら今の紅木より堅いらしいとか?!
経年劣化も進んでいることが多く、
完調状態の津軽三味線は結局、結構な支払い価格になるし、
その他の一般的な中古は大抵、メンテナンスが
必要な状態で、しっかり治すと購入費+5万円〜位は
みておいた方が良い事がほとんど。
いずれにしても、
一回、完調な状態へ戻す為にオーバーホールに出して、
ゼロベースつまり『基準』を知っておくべきだと思うんです。
いっそのこと、これから始めて長くやるつもりなら、
いくらビンテージの素材が良質でも、劣化具合を考えると
精神衛生的にも新品を買ってしまうのも選択肢だとおもう。
画像の三味線は『金ホゾ』三味線なんだけど、
我が家に来た時は・・絶句するくらいボロボロだったんです。
4つあるホゾのうち、2つが崩壊、金具にボキッと折れた、
ホゾの木片が埋まっていて、さらに素人応急処置で
「木ねじ」とボンドで固定補修してあるという・・・。
(家族はミツ折れ棹の分解方法が解らなかった様で破壊)
ただ、知人の「祖母の形見」だという事で
三味線は弾かないけど、処分するのもなんだし、
壊れながらも何となく形には戻したのでしょう・・・。
(手に取った瞬間、木屑とともに崩壊しましたw)
そのうえで、三味線自体は極上品!
悩んだ末、三味線と付属品一式、お気持ちとして、
金ホゾなので3万円で引き取り、オーバーホールに出すことに。
職人さんも、前代未聞の素人修理の痕跡を元の状態へ
戻すだけで相当な労力を要したそうです。笑。
民謡1舞台(演奏)ごとに糸を交換していたくらい
大切にしながらも、ガンガン現役で使用していた模様で
その後、要調整箇所が出るわ出るわ。
全く、見た目じゃわからないのですが、やはり
ビンテージ木材だったので細かい調整が必要とかで、
「弾くだけなら音は出るけど、本来の音色はでないよ」
これです!音はでるけど、本来の音色は出ない!
「昭和バブル期のヴィンテージ三味線の方が良質だよ。」
そんな言葉を聞いたら、思い出してください。
・保管をしっかりしていた。
・演奏に最近まで使っていた。
・定期的にメンテナンスに出していた。
これらの条件が揃っての言葉ですので・・・。
値段を取るか、本来の性能を求めるか、あなたはどちら?
追伸:
さて、オーバーホールの費用はいかほどか?
気になりますよね・・。
・ホゾ修理(現状復帰作業と作り直し)×2
・カンベリ補修(棹面の糸溝補修)
・サワリ駒交換
・ハ調整( 棹と胴がハの字になる様に角度の調整)
・糸交換×3
・漆塗り直し
・胴掛け、天神カバー新調(本津軽漆塗り)
(手持ちの一般的な物を最初は装着していたけど、
金ホゾに装着すると違和感が凄く泣く泣く3万円の出費)
修理費合計で10万円弱でした。
購入費も含めてトータル17万円くらい。
それまで使っていた太棹を1本売却して費用補填。
実費7万円くらいの支出なり。
お財布には痛手だったけど、
結果的には、持っていた三味線より、
良い音色が出てるし、胴の鳴りも大きく満足。
なにしろ、ビフォーアフターを知っているだけに
既に愛着が湧いてその後、
より良さそうな昭和期の個体を探す事は無くなりました。
安いヴィンテージを手に入れて、より良い物を、と
とっかえひっかえするより、ある程度は、
初期投資をしてしまうのも良いと思います。
今日も良い1日を!
カテゴリ:津軽三味線&和楽器(メイン)